昭和建築の旧邸は、夏は屋根からの熱気で2階の部屋は特に暑く、エアコンをかけても涼しくなるまでの時間がかかった。特に天井からの熱気を感じる事自体が嫌であったため、今回の新築時には、なんとか改善したい思いが強かったのを覚えている。
また、長寿命かつ耐震面から家の負担を軽くできる屋根材とルーフィングを選択することで、初期コストはかかったとしても、メンテナンスコストを下げられれば、住み始めて以降、お金の心配をすることが少なくなる。
結論は、
- 1.屋根からの熱気対策は、屋根の長寿命化にもつながる二重屋根構造を採用
- 2.屋根材は、軽くて強いSGL鋼板+色褪せしにくいフッ素塗装の組み合わせ
- 3.屋根材と屋根板の間に敷くルーフィングは、高耐久のタジマ ニューライナールーフィングを選択
上記3点をオススメする。
1.屋根の長寿命化にもつながる二重屋根通気工法
二重屋根通気工法は、屋根の断熱性と通気性を高めるための工法だ。
通常の屋根の上に、さらに垂木と野地板を重ねることで空気層を作り、熱や湿気を外部に逃がす事が最大のメリット。これにより、夏は涼しく、冬は暖かく、快適な室内環境を維持し、通気することにより屋根の寿命を延ばす事にも繋がる。
実際の自邸の二重屋根の画像がこちら。

下の野地板が、通常の屋根に当たる部分で、垂木の上にあるのが2枚目の屋根になる。中間層に空気が流れることで、熱や湿気が上昇し、棟から排気される仕組みだ。
屋根の場合二重屋根と言われる通気工法だが、実は外壁には今や当たり前に壁内通気工法が広く普及している。
垂木に相当する胴縁と呼ばれる具材を用いて、通気層を設け、建物から出る湿気を排出している。なぜ壁内通気工法は広く普及しているのに、二重屋根通気工法は、こちらから指定しないと取り入れてもらえないのか、不思議で仕方がない。
因みに、屋根に用いられる野地板は、特類を指定したい。
野地板の「特類」とは、構造用合板の種類の1つで、特に耐水性や強度に優れたものを指す。具体的には、合板の種類を分類する際に、接着剤の耐水性に基づいて特類、1類、2類に分けられ、特類が最も耐水性に優れている。お家の寿命を40年以上見据えるなら、雨風が一番激しい屋根の野地板にも拘りたい。
ちなみに、株式会社イシカワでは、こちらが指定しなくとも、特類の野地板が屋根に標準で使用されていた。
自邸の場合、二重屋根通気工法にかかる費用は二十数万円程度。数千万円する自邸建築において、わずか二十数万円の出費は、その後のリターンを考えれば、採用しない方がおかしいというものだろう。
2.屋根材は、軽くて強いSGL鋼板+色褪せしにくいフッ素塗装の組み合わせ
屋根材は、お家の耐震面、またお家全体の負担を考慮し、できるだけ軽いものを選択したい。理由は、軽量化により、建物の重心が低くなり、地震の揺れ幅が小さくなるため、倒壊リスクを減らすことができるからだ。また、屋根を支える柱や梁への負担も軽減され、建物の耐久性も向上する。
自邸建築をスタートさせた当初は、瓦屋根一択だった。人生の中でド定番の屋根材であり、焼き物であるがゆえに、長持ちで塗装不要という認識があったのだが、色々調べていくと、その重さゆえ、地震災害にはマイナスに働くことが分かってきた。
そこで軽い屋根材を調べていくと、ガルバリウム鋼板というものに辿り着く。
ガルバリウム鋼板とは、鉄板を基材として、アルミニウム、亜鉛、シリコンを主成分とする合金でメッキされた鋼板のこと。JIS規格では「溶融55%アルミニウム―亜鉛合金めっき鋼板」と規定されている。
なので、ガルバリウム鋼板に決定しかけたが、さらに調べていくと、ガルバリウム鋼板をさらに進化させた「SGL鋼板」というものに辿り着く。
SGL鋼板とは、日鉄鋼板が開発した次世代のガルバリウム鋼板で、ガルバリウム鋼板の耐食性をさらに向上させたもの。
従来のガルバリウム鋼板のめっき組成にマグネシウムを添加することで、耐食性が約3倍にアップ。特に、切断端部や傷など腐食しやすい部分の腐食を抑制する効果が高く、厳しい環境下でも優れた性能を発揮するスグレモノだ。
自邸建築の初期に候補に上がったSGL鋼板の具体的な屋根材は、アイジー工業のスーパーガルテクト、ニチハの横暖ルーフα プレミアムSの2つ。
約2㎜とわずかながら断熱材一体型の為、雨音が室内に入りにくいメリットもあり候補に上がったが、この2つはリフォーム時に使用される事がメインの屋根材であることが判明。圏外に消えていった。
そこで最終候補になったのが、ニスクカラーPROいう、SGL鋼板を作った日鉄鋼板の屋根材だ。SGL鋼板+ポリエステル塗装の組み合わせで決まりかけたが、ポリエステル塗装よりもさらに長寿命塗装を発見することになる。それがフッ素塗装と呼ばれるもの。
フッ素塗装とは、フッ素樹脂を主成分とした塗料を用いた塗装のこと。耐久性や耐候性に優れており、外壁や屋根など、建物の保護や美観維持のために幅広く使用されている。特に紫外線による劣化が激しい屋根や外壁、シャッターなどに適していると言われている。
高耐久、メンテナンスコスト重視は譲れなかったので、最終的にはニスクフロンPROに決定した。
金属屋根は、葺き方が縦葺、横葺の2種類ある。私の希望は横葺だったが、これだけは叶わなかった。理由は、関西でイシカワが交渉できる範疇で、横葺できる業者がいなかった為。横葺は雪国である東日本で主に施工されているとのことだった。
因みに、横葺にしたかった理由は、カシメの納まりによって、屋根のてっぺんにあたる棟のコーキングをなくすことで、無駄なメンテナンスをしたくなかったからだ。
金属屋根の横葺きにおけるカシメとは、屋根材同士を接合する際に、折り曲げたり、重ね合わせたりして隙間をなくす施工方法のこと。丁寧な施工がなされた横葺の場合、結合箇所にコーキングが使用されていないため、メンテナンスをする必要が無くなる。つまり維持費用が限りなくゼロに近づくことになる。
私は諦めたが、関西在住の読者の方がいれば、一度施行業者に確認されたし。維持コスト、屋根の心配事が減ることは、心にも、お財布にやさしいこと、間違いない。
3.屋根材と屋根板の間に敷くルーフィングは、高耐久のタジマ ニューライナールーフィングを選択
屋根材と同じくらい重視したのが、ルーフィングだ。
ルーフィングとは、屋根材の下に敷く防水シートのこと。二重屋根の場合、三次防水として、雨漏りを防ぐ重要な役割を担っている。屋根材だけでは防ぎきれない雨水を、軒先まで排水する役割も果たす。
この大事なルーフィング。これも、どれも一緒というわけではない。グレード、価格に応じて、耐久性、性能が違うのだ。
詳細は、下記テイガクさんの記事を参照されたい。
わずかなコストアップ(数万円)で、高耐久、高性能を主眼とし、ニューライナールーフになった。
因みに、二重屋根の一枚目の屋根のルーフィングは、透湿防水の観点から、タイペックのルーフライナーを採用。二重屋根を採用したことで、三次防水まで確保できた。
お家の中で一番過酷な環境下に晒され続ける屋根には、見えないところまで、ぜひ拘りたい。