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全館空調をより可能にする設備とは

 エアコンだけで、全巻空調は可能なのか。

 答えは、ノーだ。

 冷気・暖気は、上昇、下降、つまり上下に動きはするものの、横方向の動きは、人為的に起こさないと難しい。横方向に空気が勝手に動くなら、扇風機などこの世に必要ない。

 では、家の隅々まで、全巻空調を行き渡らせる設備は何なのか。

 それは、循環ファンである。

 各居室に設置することで、より快適に過ごすことができ、全巻空調が可能となる。また、快適な全巻空調維持には、外部遮蔽が必須となる。高気密高断熱住宅にとっては、わずかな日差しでも、ガラスを通して室内に侵入すると、室温に大きく影響するからだ。

 結論

  • 1.居室の広さに応じた循環ファンの設置。
  • 2.循環ファンの風量を送り込む向きを意識的に工夫する事によって、家全体に冷暖気を循環させる。
  • 3.各居室の日差しを適切に遮蔽するための庇+簾止めを設置し、室温を維持する。

 上記3点が、より快適な全館空調を可能にする方法である。

1.居室の広さに応じた循環ファンの設置と向き

 オープンスペースに設置したエアコンからの冷気・暖気を、閉ざされた居室に送り込むのが、循環ファンと呼ばれる設備だ。あまり聞きなれない住宅設備だが、要は小さな扇風機を、居室の壁に設置すると捉えてほしい。

 循環ファンには、2つの役割があり、

  • 1.居室に向かって、オープンスペースの冷暖気を送り込む
  • 2.オープンスペースに向かって、居室の冷暖気を送り出す

がある。1と2を組み合わせることで、血流のように、家全体の空気が巡り巡って、温度ムラのない快適な室温になる。

 居室の場合、入り口扉の壁上部が、主な設置場所となるが、エアコンの設置位置から居室が遠ければ、設置場所を考慮する必要がある。循環ファンの設置向き(風量を送り込む向き)は、居室の場合、繰り返すが、オープンスペースから居室に風が送り込まれるようにする。

 そこで一番重要なのは、循環ファンの送風量である。居室には、人体からのもの活動によるもの、またパソコンなど、発熱行為がいくつかある。適切な風量タイプを選択しなければ、設置したのに部屋が暑いまま、寒いままという、不快な現象が発生してしまう。

結論

  • 1.6畳用の居室の場合、送風量が200m3以上
  • 2.居室よりスペースが狭いファミリークローゼットや玄関ホールといった区切られたオープンスペースは150m3前後

上記タイプのものを選択しておけば、間違いない。

 自邸の場合、すべて三菱電機製の循環ファンを採用したが、各居室に採用している品番は、接続パイプ200㎜タイプで、V20PSD3。送風量は、255m3。また、ファミリークローゼットや区切られた玄関ホールに設置する場合の機種は、接続パイプ150㎜タイプで、V12PD8。送風量は、135m3あり、1年間過ごした自邸では、大いに活躍してくれた。

 循環ファンを実際に使用し、居室外側の閉めた扉の前に立ってみると、扉のアンダーカットから、足元に大量の空気が吹き出してくるのを感じることができる。つまり、室内の空気が押し出されているのだ。

 ただ、循環ファンの設置に関して、自邸建築前に家族から、懸念事項がいくつか上がった。

  • 1.循環ファンを通じて、居室内での話し声がオープンスペースに漏れ出て、プライバシーが確保されないのではないか。
  • 2.風量音が大きく、夜眠ることが出来ないのではないか。

 答えは、いずれも杞憂に終わった。

 1.の場合、住み始めて実際に感じたことは、オープンスペースに居室の話し声が漏れ出ることは無かった。おそらく、風が居室方向に送り込まれ、それなりの風量音が発生していることが要因と考えられる。また、令和のお家づくりのうち壁の厚さが、昭和の旧宅と比較して、かなり分厚いことも大きく影響していると考えられる。

 2.の場合、風量音はそれなりにするものの、その音が要因で眠れないことも無かった。

 そもそも旧邸では、居室のエアコンを稼働させて就寝していた。それなりの風量音で就寝するのは、旧邸時から行っていたことで、まぁ慣れによるものが大きいと思う。

2.循環ファンの風量を送り込む向きを意識的に工夫する事によって、家全体に冷暖気を循環させる

 自宅の冷暖気をいかにして巡らせるのか。自邸建築にあたって、横方向の空気の流れは、間取り上で、何度も循環ファンの位置と送り込む風の向きを、様々シミュレーションした。

 ではどのようにシミュレーションするのか。

 ここでも、コラボハウス 清家修吾さんの間取りを活用して、シミュレーションしてみよう。

 冬の場合、暖房を稼働させるエアコンは、1Fがメインとなる。1Fの間取りを見てみよう。例えば、階段下スペースにメイン稼働のエアコン、サブエアコンは、玄関に設置する。循環ファンは、玄関ホールからリビングへの入り口扉上に、風を送る方向は、矢印方向の向きで循環ファンを1台設置。4.5畳和室のリビング引き戸上部に矢印方向に風を送る向きで、循環ファンをもう一台設置する。

 こうすることで、和室から玄関ホール、リビングへの空気の流れを作ることができ、寒い玄関を回避することができる。

 また、階段スペースから上昇した暖かい空気は、2階の居室の循環ファンを回すことで、2階全体も暖かくなる。

 夏の場合は、2Fのエアコンをメイン稼働させる。2F洗面所上のエアコンをメインエアコンとし、故障時に使用するサブエアコンは、階段ホールに設置。

 メインエアコンからの冷気は、長い廊下の左右に分かれた居室の入り口上部の循環ファンより、冷気を取り入れることで、2F全体が涼しくなる。また、階段スペースから冷気1Fに降りることで、1Fも涼しくなる空気の流れを作る。

 この時、1F,2Fともに、メインのエアコンは、再熱除湿付を選択する。先ほど、夏は、2Fのメインエアコンを稼働と述べたが、6畳用のエアコンで除湿できる能力は、建て延べ30坪のお家全体を除湿するパワーはない。なので、1F,2Fそれぞれで除湿し、湿度が50%前後をキープできれば、カビ発生の心配はなく、温湿度ともに快適な状態で、過ごすことができる。

 このシミュレーションは、あくまでも一例だ。自分だったらこうする、ああするというシミュレーション力を高め、後悔を少なくすることこそが、何よりも重要なので、上記間取りや自邸間取りがあるなら、是非シミュレーションしてみて欲しい。

因みに自邸の間取りと循環ファンの位置、風向きは下記の通りである。